「えっと。落ち着いた感じの人。かな」


若干小声で彼女は答える。


「愛梨ちゃん、コイツの質問に真面目に答えなくていいから」

「あ、はい」


かばうように兄が言い、退屈そうにスマホをチェックし始める。

ジンの方を見ると、私たちの話には全く興味がない素振りで楽譜に目を走らせていた。


「落ち着いた感じかぁ。だったら……」


デニムのポケットからスマホを取り出して、考える。

愛梨ちゃんに合いそうな人で、尚且つ落ち着いた人……。


「陽介は女好きで遊び歩いてるからダメでしょ。お兄ちゃんは面倒くさがりで、いまいち落ち着きがないからダメだし。……あ」


私は二人、条件にぴったりな人を思いついた。

一人は、離れたところに座っている無口で冷静沈着なジンと。

もう一人は、遼……。


ジンは愛梨ちゃんの好みについて興味なさそうに装っているだけだと見て、私はちょっとばかり意地悪をしてみることにした。
ジンは除外、と。


「ね、遼はどうかな? 今フリーなんだよね」


私は兄の方に顔を向けた。


「愛梨ちゃんと遼?」