俺は香山裕樹(ひろき)、高校3年。

学校のみんなから『微笑みの貴公子』なんて呼ばれているが、いつもニコニコする事が急にうんざりした。

今までの俺は何だったんだろうと思う。

家でも学校でも、常に『良い子』を演じて来た。
そしてみんなから好かれ、信頼され、尊敬される事に俺自身が喜びを感じていた。

しかしそれは、自分を偽る事で、身を守っていたに過ぎないのではないか。つまり、微笑みという鎧を身にまとっていたに過ぎない。

たとえ傷付こうとも、本来の自分で生きてみたい。俺はそう思うようになった。

ちょうどいい見本がすぐ傍にいる。親友の水嶋遼だ。