「名波さんっすよね?」

人が行き交う雑踏の中で知らない男に声をかけられた。

「覚えてないですか?1週間前に朝方、車で送って頂いた矢城です」

ああ、あの時の子か。
あれから吉村さんの様子はおかしいんですよね…。

「もちろん、覚えてますよ」

「すっごい怪訝な顔してましたよ」

どうも顔に出ていたみたいで矢城さんは「まぁ、覚えてないのが当たり前っすよね」と自己簡潔をしている。