――……。


車に戻ってすぐ、冬馬兄ちゃんは小さなため息をついた。


「…ニオイが取れない」


呟いた冬馬兄ちゃんの服からは、確かに香水のニオイがした。
冬馬兄ちゃんの隣に居たミキさん。そのニオイが移ったんだろう。

それを消そうとするかのように、タバコに火をつけて煙を吐いた。


「ごめんね、美和ちゃん」

「えっ…」


…なんで謝るの?冬馬兄ちゃんは何も悪くない。
逆に、ファミレスから連れ出してくれたことに感謝してるくらいだよ…。

ミキさんとは一緒に居たくなかったし、良明くんとだって…もう、話したくなかった。


「いや…良明くんと、あの場で決着をつけた方が良かったかなと思って」


決着。
良明くんと私とミキさん。
本来ならば、私たちの関係をあの場でハッキリさせるべきだったのかもしれない。


「…これから先、私どうなっちゃうんだろう?」


今はただ、明日が怖い。
良明くんと会わなきゃいけない、明日が怖い…。