「さあ!これで一通り説明は終わりです。
長くなりましたが、さっそく編み始めてみましょう。


次の日、朝早くから裕美は里奈と一緒に、編み物教室へ出かけた。

手芸屋さんの隅の方を使って教室は開らかれていて、女の人が何人か集まっていた。


教室っていっても何度も通うわけじゃなくて、先生が教えてくれるのは最初の一日目だけだ。

残った部分は、説明書や、教室で習ったことを活かして自分で作り上げるということになっていた。


裕美と里奈は、三つならんだ長机のうち、真ん中の机の端に座った。


「ねえ、大丈夫かな。あたし超ぶきっちょなんだけど…」


笑顔で説明する先生の話を聞きながら、裕美は不安そうな声を出した。


「ちょ、分かんなくなるから話しかけないで!」


里奈は真剣そのものだ。愛する武田くんのため、女の子モード全開!

裕美はため息をついて、説明に耳を傾けた。


「少し手間はかかりますが、その分、完成した時の達成感も大きいですよ。それに、一番大事なのは真心です。

上手にできなくても、大好きな人のために作ることに意味があるのではないでしょうか。さっ皆さん、頑張りましょう!」



はーい、と生徒の皆が笑顔で答え、作業に取り掛かった。


(大好きな人のため、ねぇ…)

すると、里奈が裕美の耳元で、「亮太くんのためにね」と呟いた。


「だから違うって!」

裕美がガタンっと立ち上がり大声を出したので、周りから注目され、皆に笑われてしま
った。

裕美は「里奈~」と、顔を赤くして睨むと、里奈はいたずらに舌を出して、一緒になって笑った。


編み物は、思っていたよりもかなり大変そうだ。せめて途中で投げ出さないようにしなくては。

飽きっぽい自分の性格を思って、裕美はさっそく不安になった。



裕美が作ろうとしているのは、白い毛糸のマフラーだ。

二人は時間いっぱい、集中して作業に取り組んだ。