「楓、クンっ……」


薄暗い部屋で、

あたし達は折り重なって何度もキスを繰り返す。


次第にキスは激しさを増して、呼吸も出来なくなるくらい。


時計は12時を回っていた。


もう、こんな時間。


「穂香」


熱のこもった声であたしの名前を呼ぶ。


「お前が欲しい」


楓クンはあたしが待ち焦がれていた言葉をくれた。


「……楓クン…っ」


「お前が、好きだ……」


やっとくれた“好き”。


嬉しすぎて、あたしは何も言うことが出来なかった。


「穂香……誕生日おめでとう」


「………えっ?」


誕生日って、どういうこと?


すると楓クンは眉を下げて、驚くほど優しく微笑んだ。


「今日は穂香の誕生日だろ?」


7月12日。

……今日はあたしの誕生日だったんだ。


自分のことなのにすっかり忘れてた。


「楓クン……覚えててくれたんだ」


「好きな女の誕生日、忘れるヤツいるか」