夫が死んでしまった。


わたしに残されたのは500万を超える借金と仕事と3人の子供達。


これからどうやって生きていったらいいんだろう。


途方にくれるわたしは泣くことも出来なかった―――

夫の葬儀では、彼の同郷の友達が多く訪れた。


「力になれることがあったら遠慮せずに言ってください」


みんなそう言ってくれたけれど、借金のことなんて頼めるはずもない。


暗い気持ちで彼の遺影を見つめていた時だった。


「優奈、久しぶり」


懐かしい声に顔を上げると、そこには端正な顔立ちの背の高い男が立っていた。

「タケルくん」


彼の名前は工藤タケル。


高校を卒業後、いろいろな仕事をして行く中で、派遣社員として出向した会社で出会い、わたしが初めて付き合った男だった・・・・・


付き合ったと言っても半年ほどのこと。


タケルくんに別の彼女ができて、別れることになった。


その時、いろいろ相談に乗ってくれ、傍にいてくれたのが夫の信次だった。


「来てくれてありがとう」


わたしの言葉にタケルくんは笑みを浮かべた。


「驚いたよ。信次が死んだなんて。交通事故だって」


「うん・・・・・仕事の帰りにね。小さい子を避けようとして、電柱に激突したの」


「そうか・・・・・お前、大丈夫か?」


「え?」


「顔色が悪い。ちゃんと食べてるか」


「―――大丈夫だよ。子供達もいるし。わたしが倒れてる場合じゃないって、ちゃんとわかってるから」


「けど、無理はするなよ。お前、あんまり丈夫な方じゃねえだろ」


「うん、ありがとう」


そう言ってふとタケルくんの方を見た時、それが目に入って来たのだった。