「リキ…」

抱きしめられる体を押し返すことはせず、マツリは名前を呼んだ。


「マツ、リ…」

甘い声が理性を吹き飛ばす。


津山マツリ新米教師、森崎リキ学内1の問題児。

自分とリキは先生と生徒。それをなくしても大人と子供。

漏らしてしまいたい本音を飲み込み、マツリは唇を強く噛んだ。

そうしないと決意が揺らぐ気がしたからだ。


しかし、


「マツリ」という甘い声が唇に触れた瞬間、頭の中が真っ白になった。


(―――キス、した!?)