「ただいま」

家に帰り、少し大きめの声で言った。

「おかえり~」

3歳の弟が駆け寄ってくる。適当に頭を撫でて、2階に上がる。2階では5年生の妹がテレビを見ていた。

「向こうの部屋に行って」

なぜだか近頃、妹は僕と同じ部屋に居ることを拒む。なんとなく分かる気はするが。

「なんで?」

それでも妹に尋ねる。

「イヤだから」

「なんで?」

「イヤだから」

「なんで?」

「イヤだから」

「なんで?」

「うるさい!そっか、兄ちゃんは、じいちゃんが死んだときも泣かなかったもんね」

妹は、じいちゃんが死んでから、よく言うようになった言葉。今でも、思い出せる。