「もしもし」


『お姉ちゃん、お兄ちゃんが……』


いきなり聞こえて来たのは、郁美の泣き声だった。


「涼がどうしたの?」


『お兄ちゃんが……怪我して病院にいるって、警察から電話が来て……』


「怪我!? どこの病院?」


郁美から聞いた病院は、隣の市の総合病院だった。


「郁美はどうするの?」


『私は……』


「ちょと貸して?」


「あ、はい」


私は拓哉さんに携帯を渡した。


「郁美ちゃん? 香取です。今から迎えに行くから、一緒に病院へ行こう? そんなには掛からないと思うから、ね?」


拓哉さんは私を見て、『いいよな?』と目で聞いたので、私は小さく頷いた。


「田中さん、行き先変更!」


拓哉さんは、田中さんという香取家の運転手さんに、私の家に行くよう言ってくれた。