「ありがとうございます。
話してくれて。

……ところで御劔検事さん、好きなんですか?巴さんのこと。」

一呼吸置いて、彼は口を開いた。

「好きだよ。
検事局にねつ造された証拠を渡されて法廷に望んだ。
その証拠で無実の人間を処刑した。
……真犯人は巴さんの上司なんだ。
しかも、警察局の局長。
証拠をねつ造したのもその人だ。
さらに、自分の罪をたまたま現場に居合わせた巴さんの妹に着せようとした。

結局、私が、真犯人を暴いたが、彼女も、真犯人に協力して証拠を隠滅したりしていたから、それで罪に問われた。

刑期を終えて、真っ先に彼女に会ってきた。

彼女と一緒に仕事がしたいと伝えに。
何なら仕事以外のプライベートも自分が支えたい、とね。」

「これでようやくわかったよ、兄さん。
ありがとう。
ハナ、覚えてないか?
小学校2年くらいのとき、レンが毎日のように言っていた言葉。」

「『巴姉さんが最近冷たい』でしょ?
その局長さん、巴さんを脅迫してたんだね、きっと。
そして茜さんに危害が及ぶのを恐れた彼女はそれに従うしかなかった。
冷たい仮面を被ってね。」

「オレは納得いかなくてな。巴さんは止めてくれたんだが、オレは自分を見つめ直す旅に出たんだ。
優や母さんには迷惑をかけたよ。」

話し終えたところで、巴さんが心配だから様子を見てくると行って家を出た。
最近、検事が何者かに脅迫される事件が相次いでいるのだという。

御劔検事さんが出ていった後、ミツも家の外に出た。
お母さんから電話が来たらしい。

ヤバ……泣けてきた。

母親はどこかで生きているらしいが、どこにいるのか。

頭の中がとにかく混乱している。

前方に、誰かの気配。
ミツか。

「ごめんね。泣いたりして……」

そう言う私の身体を抱き寄せ、頭を撫でてくれるのはミツだ。
今は誰かに甘えたかった。

聞こえた誰かの声にゆっくりと目を開ける。
そばには御劔検事さんがいた。
顔を上げると、ミツの顔。

あのまま、ミツの膝枕で寝てしまったらしい。

巴さんが作ってくれた朝食の席で、御剣検事さんと巴さんが付き合っていることを聞く。

昨日の飲み会で局長がみんなに言い触らしたため、職場のみんなは知っているらしい。
気づくと8時だ。
御劔検事さんが法廷に立つ裁判を傍聴に行くため、みんな揃って家を出る。

私は、そのことを母親に伝えるべく、ミツを連れて先に家を出た。
リビングの灯りを確認してから、私の家のドアを開けようと、ドアノブに手をかけた。

ドサッ。

「え……」

背後から、聞き慣れない音が聞こえた。
ミツがうずくまるようにして倒れていた。