……中学に入ってから、初の定期テストには苦戦させられた。

もう、ハナから紹介してもらって以降、"ヒミツのたまり場"と化したエージェントルームにて、勉強した。

合間に伊達さんが技術(PC関係)を、ホームセンターへの就職を目指して勉強中の天杉 裕太さんが、木材関係のことについて教えてくれた。

技術やら美術やら、家庭科に、体育。
実技の教科にまで紙の試験があるということが解せなかった。

実は、このエージェントルームは、表は"エージェント"だが、全員"裏の職業"がある。

音大生だったり、料理研究家だったり。
スポーツインストラクターや洋服のパタンナーまでいる。
さらには、私立中学校の養護の先生までいる。

いていいのか?

とにかく、多岐にわたるのだ。
中には、見たものを忠実に再現できるスゴい才能を持った画家までいる。

そう、このエージェントルームはバラエティーに富む職業の人がいる、"スゴ腕の秘密機関"でもあるのだ。

初定期テスト9教科が高得点だったのは、この人たちのおかげだ。

結果を伝えに行くと、かなり喜んでくれた。

校外学習「若あゆ」まで1週間。

若あゆの前に身体測定があった。
女子の内科検診と聞いて、ハナがどこぞのオッサン医師に身体を見られることに寒気がした。

「そこまで好きかねぇ、ハナちゃんのこと。
もう、付き合っちゃえよ。」

「矢榛、声がデカイぞ。

そういう男女の浮いた話は、校外学習の夜に言うものだ。」

「聞かせろよ?絶対だぞ!」

身体測定の最中は、女子もいないと授業にならないため、自習になっている。

若あゆでオレと矢榛と同じ班の早川 守《はやかわ まもる》。
ソイツにも、何やら事情があるようだ。
先ほどから身体測定を終えて、女子が通るたびにキョロキョロしている。
上手く、若あゆの夜に吐き出させてやるか。

浮いた話の相談は、得意な方ではないのだが、自分自身も霧生に恋をしている矢榛が適任だろう。

女子の身体測定が終わった頃、やっと授業が再開された。
授業と言っても、定期テストの解説だから、ユルかったのだが。

ピザ作りや、1日目の体験学習、スタンツなど班で動くものは多い。
1日目の体験学習は、カヌーだ。

そういうことに興味のある男子たちは、カヌーで服が濡れたときに女子の下着が透けないかなどと、考えているらしかった。
なるほど、中学生の考えそうなことだ。

男なら、スマートにタオルを渡すほうが、モテ度は上がると思うのだが。