「葉子はもう30よね?」

家でぼーっとしていたら、お母さんが唐突にそんな事を言った。

「気にしてるんだから、言わないでよ、お母さん」

「いい人いないの?」

「いい人って?」

「結婚の相手に決まってるでしょ?」

「な…いるわけないでしょ!」

「好きな人もいないの?」

「それは…って、なんでそんな事聞くのよ?」

「いいから、答えてちょうだい」

「………いないわ」

一瞬、亮君の事を想ったけど、それを打ち消すように私はそう言った。

するとお母さんは頷き、お父さんと何やらアイコンタクトを取っている。
何か、今日の両親はおかしい気がする。

「なあ葉子、これなんだが…」

お父さんが、おもむろに私の前に薄いA4サイズの封筒を差し出してきた。