とりあえず、
両親とはぐれてしまった
駐車場に真っ直ぐ向かった。

さっきまで
ゴミ置き場に群がっていた大量のハエは、
もうそこにはいない。

まだ真夜中、
どの家にも明かりなど点いていないのに、
さっきよりも景色が鮮明に見えた。

駐車場が見えてくる。

でも、誰もいない。

いつもは恐くて気になった
駐車場横の霊園は、
もう男の子の頭には入ってこなかった。

(あまりうろつきたくはない・・・・・・
お父さん、お母さん、
家の周りでぼくを探しているのだろうか)

次に男の子は
家の周囲を一周してみることにした。

両親の姿を頭に浮かべて、
辺りを見回しながら足早に歩く。

公園のそばを横ぎってみる。

昼間にはいつも
誰かが使っているブランコも、
今は風に揺れることもなく、
ただ、だらんと鎖に吊られていた。

そうして男の子はまた
家の玄関にたどり着いてしまった。

(どうしようか・・・・・・
あと一周だけしてみよう)

誰もいない夜中の道を歩いて、
不安はまた胸の内から押し寄せてくる。

今度は軽く走りながら一周した。

でも、誰に会うこともなく
玄関の前まで戻ってくる。

(あと一周、あと一周だけ!!)

男の子は全速力で走った。

これでも両親に会うことがなければ、
二人はもう家に帰っているのだと
信じたかった。