(このまま外にいたくない)

男の子は思い切って
スペアキーを使った。

扉を開けると
中はガラーンとしていて、
人が入った様子はない。

(やっぱり
帰ってない・・・・・・)

玄関に置いてある
水槽の水は、
すっかりと酸素がなくなって、
せっかく大きくなり始めていた
金魚たちが、
濁った水の上に浮いていた。

(玄関の鍵は・・・・・・
開けておこう)

男の子は
一応全部の部屋を確認して
両親の帰りを待つことにした。
ひとりぼっちで寂しいので
テレビをつけたけれど、
深夜番組も全部
終わってしまっていた。

寂しさはよりひどくなる。

男の子は
寝てしまおうとも努めたけれど、
そう簡単に
眠れるはずもなかった。

部屋の中は時計の針だけが
やけに高く響いている。

しばらくすると、
玄関の扉を開く音が聞こえた。

男の子は飛び起きて
大急ぎで玄関の方へと
足を進めたところで、
思わず急停止した。

確かに二人、
玄関から入ってくる。

でも何か
様子がおかしい。

いつもの足音、
話し声とは違う。

よく考えてみれば、
二人とも
自分の鍵を持っているのだ。

玄関の鍵を
開けておく必要なんて
なかった。

男の子はあわてて玄関からひきかえして、
とっさにカーテンの裏に隠れた。

二人が部屋に入ってくる。

カーテンごしに見える人影は、
家中何かを探すように巡回している。

その姿は背中の曲がった悪魔が、
獲物を求めているかのようだった。

空気が重くて息が苦しい。

時間は死んだように
ゆっくりと流れた。

男の子はカーテンから
自分の足が
少し飛び出していることに気づいたけれど、
とても動ける状況ではない。

そうして息をひそめていると、
人影はやっと表に出ていった。