森崎葵が、やたら私に絡んでくるようになってから数週間。アイツのイジワルにも慣れ始めていた。
そして、明日はいよいよ待ちに待った体育祭なのです。
私はわりと運動が得意だから、体育祭は楽しみだ。
けど、困ったことが一つだけ。
それは今から、30分ほど前にさかのぼる。
「あれ、牧瀬?」
「げっ、森崎葵…。」
下校途中、今日もやっぱり森崎葵はそこにいた。
わざとらしく、たまたま会ったような言い方してるけど、いつも会う。
たぶん、私が嘘だと気付いてるってこと知ってる。
知っててわざとやってる。
それが無性に腹立たしい。
「体育祭さ、何やんの?」
「競技は200メートルと障害物競争だけど」
「ふーん…。じゃあ、一位とったらいいもんやるよ」
にやり、と森崎葵は笑った。その微笑みがやっぱり悪魔の微笑みだったから、何か企んでることは間違いない。