~陸side~


夏特有の蒸し暑い夜。


「陸くーん! 胡桃、怖いよ~」


俺の腕に引っ付いてくる女が涙目で言った。


「あの、ちょっと離れてくれる?」


ガッチリとホールドされた自分の腕から女の手を引きはがしながら話す。

「ちょっ……待って!」

スタスタと歩いていく俺の後ろから追いかけてきた。


「おーい。全員集まれ~」

今日の幹事が招集をかける。

その声に、ぞろぞろと集まり始めるメンバーたち。

男女合わせて、20人ほど。

全員、同じ学部のヤツらだ。

俺らがいるのは、廃墟となった病院の正面玄関。

市街地から遠く離れ、人気もない場所にある。

以前は栄えていたようだが、過疎化に伴い……廃院となったらしい。


今から、この廃墟で肝試しをやる。

「しっかし、ココなぁ……」

5階建ての病院を見上げながら思った。

ここ、絶対に出る、だろ。

自分のカノジョには劣るが……俺には霊感があるもんで。

いるか、いないかくらいは……わかる。

この病院は、絶対にいる。

そんなことを考えていると。


「あーぁ。神崎さんもいればなぁ~」


俺の隣にいた男たちがぼやいた。