これは、其の五の事件後の、杏樹たちのことである。


――陸side――


夏休みも終わりに近づいた9月下旬。

課題などが一切ない世間の大学生は、遊ぶことに必死だ。

俺の友人たちも、それに当てはまるんだが……。


「社長、捺印してください」


――ドサッ!


秘書の北原が、大量の書類を俺のデスクに積み上げた。


俺は、今日も社長業にいそしむ毎日。

自宅の自室にあるデスクの上で、仕事をこなしている。



「夏休みもあと少しですから、できる限りは片づけて下さいね」



俺が休みであることをいいことに、秘書や重役たちが大量の仕事を持ってくる。


今も、ニコニコ笑顔で書類を渡してきた北原。


「わかった」


承諾をすると、ヤツは部屋を出て行く。大方会社に戻るんだろう。

仕事をするのであれば、会社で行うのが効率はいい。

会社のヤツらも、本当は俺が社内で仕事をする方がいいと考えていると思う。



でも、そんなことを振りきって……自宅で仕事をする理由は。