急きょ自分の科目が休講となったある日の午後。

今日は朝から快晴で、見事な青空がのぞいている。

そんな日に……まったく。

俺はため息をつきながら、構内を歩きまわっていた。

「……俺はアイツらの保護者かっての」

文句を言いつつも、人探しを続行する。


ことの始まりは、10分ほど前だった。

俺のケータイに陸から着信が入り、

『杏、どこにいるか知らねぇ?』

と、聞かれた。

法学部の俺が、教室も違う経済学部の杏樹の居場所を知るわけがない。

『知らない』と返すと、電話口での陸の声はうなだれていた。

よく話を聞いてみると。


今は、陸たちも講義がない時間らしいのだが、杏樹が見当たらないらしい。

さっき講義を終えたかと思うと、さっさと教室から出て行ったようだ。

ケータイにかけても出ないし、今陸も校内を探しているのだと言う。


『で。俺にどうしろと?』

そう言ったのが、間違いだった。


『探してくれ! 頼む!!』

電話の向こうで必死にそう言う陸。

なんでも、傍に置いておかないと心配するらしい。

陸にとっては、杏樹の周りにいる男たちが野獣に見えて仕方ないのだろう。

つーか、なんて過保護な。

アイツ……彼氏というより父親じゃないか?

そう思いつつ、陸に『了解』と伝えて通話を切り……杏樹探しを手伝うことにしたのだった。