上空いっぱいに異界からの侵略者達が広がっていた。



迎え撃つは黒い翼を持つ我が同胞達。

遠く離れた城の展望台であるここまで、剣と剣の交わる音が聞こえてきそうな壮絶な戦い。

力尽き、落ちていくのは敵か味方か。

同胞である魔族ほど視力のよくない私には判別がつかない。

しかも、今は魔力を使うことができない。

足手まといにしかならないために、ここで見ているしかできない。



なぜこのタイミングでこの世界にやってきたのか。

私も戦うことが出来さえすれば、やつらの好き勝手にはさせないのに……。

その現実に歯ぎしりしながら、臨月に近い重い腹部を支える。



「ティス様、もうそろそろ中にお入りください。おなかの御子にさわります」


部下の1人がそう進言してくる。

……わかっている。今の私には見ていることしかできないことは。

しかし、それでもこの戦いを見届けねばならないと感じていた。

あれの妻として。

そして、この世界の守護者として――。