「ちょっと湯月くん押さないでよ」

暗闇の中、あたしは隣にいる湯月くんをメチャクチャ意識していた。

「す、すいません!」

「大きな声を出さないで!」

「は、はい…!」

湯月くんもあたしを意識してるのがひしひしと伝わってくる。

暗くて体がくっつきそうになるほど狭い空間の中2人きりでいるのだ。

意識するなという方が無理だろう。

でもあたしたち、付き合って一ヵ月以上たつけど手もつないでないのだ。

それなのに暗闇の中で密着状態ってのは刺激が強すぎだっての!

でもこれも脅迫犯を捕まえるため。

あたしはバクバクいってる心臓を必死に押さえながら、隙間から楽屋の中をうかがった。

杉田さんに翼さん、達郎兄ちゃんが出ていってまだ間もない。

達郎兄ちゃんは、状況からスタジオ内部の者の犯行と推理した。

よって部屋に爆弾が仕掛けられていたにも関わらず、平然とスタジオ入りすれば、犯人は面食らうに違いない。