威嚇した。


高々と振り上げた鎌は、間合いに入ろうものならば、即座に神速を持って相手を捕らえるだろう。
一撃必殺の構え。
一度捕らえれば二度と離すまい。
哀れなる捕らわれた者は、逃れられぬ二本の腕の中、彼の強靭な顎で噛み砕かれるのをただ待つより他にない。
そんな唯一無二の武器を、隙なく構える。


彼に恐怖はない。
この鎌はただ生きるために。
獲物を捕らえ食べ生き長らえる事と、
敵から身を守り生き長らえる事。
その二つの為に彼は振りかざすのだ。


一対の鎌を振り上げ、後肢はしっかりと、中肢はフットワークを考えやや内気味に。
極限まで神経を研ぎ澄ます。


命のやり取りに張り詰める空気は、夜気を纏って少しづつ冷えていく。