ケータイ小説 野いちご

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繋がれたリビドー【BL】

崩れる視界
舞踏会

舞踏会は仮面を装着するのがこの国の嗜みだ。
綺麗な鳥の羽をあしらったり、きらびやかな宝石をちりばめたり、細工を凝らした仮面をそれぞれ着けている。

ビキはその姿を天井裏の隠し部屋で覗き見ていた。
シャンデリアの真上から穴が有り、そこから会場が一望出来るのだ。

「王子の命令じゃなければ貴様など一生かかっても出られないだろう、感謝するように。」

ビキの仮面は、真っ白な傷一つないもので、唇は無表情に形どられ目と鼻がくり抜かれていた。

全て被る形の仮面の中は分からず、ビキはぶつかる鏡の冷たさに身震いした。


「……行け」

背中を押され、シャンデリアの光に眩んだビキはよろめく。


「気をつけなさい。」

冷ややかな、声をした朱い漆塗りの仮面の大柄な男に支えられる。


「……。」

ビキは仮面の中は口を塞がれていて、頷くばかりだった。


「……滑稽だね、道化のよう。」

後ろから、王子の声がした。
ビキの仮面は外から瞼を閉じるような蓋が付いていて、王子はビキの仮面を目を塞いだ。


「目を閉じて、踊れなくとも殺し合うのは出来るだろう。お姫様?」

王子の足音で位置もはっきりと特定した、演奏は速くなり、殺気がより露になる。
指先を切っ先の代わりにいつもの稽古の延長をした。
3寸程先で硝子の割れる音がした。



「ティラの首が、落ちたぞ。」

軽く酔った、まだ若い男の声がした。


「それは汚い。」

間近で聞いた王子の声は凛として背筋が伸びた。


「気味の悪い稚児だな。新しいお遊びか?」

ビキの横に止まり、果実酒の吐息を撒き散らす男はオリエッタの長子アノルドだ。


「趣向を変えて護衛です。貴殿こそ、暗殺ごっこはもうお止めになられたのでしょうか?」

アノルドの逆上したのが見て取れたビキは手が出る前に手を取り、アノルドをリードして、踊る。

されるがままのアノルドが、奥歯を噛み締めている音が、ビキには聞こえていた。

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