ケータイ小説 野いちご

繋がれたリビドー【BL】

崩れる視界

ビキが言葉を発しないように、王子もビキの剣術の稽古には甲冑を纏い、無音の中で動きの模倣をする。

模造刀で、ビキが柔らかい布や、硬質な丸太を切り付け、王子はその動きに合わせた。

音を発しない分、神経は研ぎ澄まされ、鋭敏な瞬発力も身についてゆく。

王子は語らないが、ビキの形を緻密に再現してゆくことがコミュニケーションとなっていた。

闘技場を貸し切っての稽古は、たとえ見張りの者が居ても、二人の空間に声を殺さずをえない状況になる。




「……卑しい、臭いがするわね。」

闘技場に大名行列を作り、ヒールで上がり込んで来たのは第一夫人の王の妻である。
正室の女王、ヒバリは随分と昔に亡くなり、第一側室であるオリエッタが第一夫人となった。
オリエッタが女王ではなく、第一夫人なのは、ヒバリが死んだと国民に公開していないからだ。

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