その時、思ったのは。

「あ、忘れてた」


今、教室にいること。

生徒達が見ていること。

室内は、ちょっと惨状であること。



「杏樹っ!?」

あたしの本当の名前をこの学園で呼ぶのは、1人しかいない。

酷く慌てた様子で。

心配でたまらなかったという目で。


教室の中に、会長が入ってきた。



繭ちゃんを抱き上げたまま、体ごと彼の方を向く。


「杏樹! 何があったんだ?」

見鬼のない会長が、繭ちゃんを凝視していた。

まだまだ妖気は強かったみたい。


「ん~~? 友達になってました」

聞かれたことに忠実に答える。


うん、そう答えるしかない。

調伏をしてたわけじゃないし。

今から、この子をする気も起こらないしね。