陸の腕の中に飛び込んで、だいぶ経った。

イヤがってた……甘い匂いが、不思議と落ち着く。

首にまわしてる腕を巻き直して、もう一度強く抱き着いた。


「……ギューして」

「鈍感娘。当たってるし……」

「はい?」

「なんでもない」


そう言うと、背中と腰に腕をまわして抱きしめられる。


「痩せたな……」

「そうかな?」

ぺたぺたとあちこちを触る陸が呟いた。

「メシは食ったのか?」

ブルブルと顔を振って否定する。


「何か口に入れろ。すりおろしたりんごなら食えるよな?」

「たぶん……」

曖昧に頷いて見せた。

あんまり食べる気はしないんだもん。


ただ陸に抱き着く。

何もいらないから、こうしてるだけで良いんだ。