ケータイ小説 野いちご

Garden3

来る、遅し


「すいません、ちょっといいですか?」


怪しいリュックを背負った人が近づいてきて、般若心経を書かされた。

素直に書いてしまう自分が恨めしい…


でもオニイサン、修業を人任せにしていいの?


そんなことを思いながら、立ち去る後ろ姿を見送る。



「あのぉ、今ちょっと時間いいですか?」


カットモデルを探す美容師さんに声をかけられる。


名刺を握らされて、笑顔で去るオネエサンを見送る。


これ以上、どこを短くするのさ…



「エクスキューズミー?」

英語で声をかけられる。

何を言ってるのか分からない。

からとりあえず、義務教育で取得した唯一の英語

(ぱーどぅん?とぷりーずもぁすろぅりー)

を繰り返してみる。


やっと理解したのは、山手線に乗りたいらしいこと。


駅は目の前だっつーの。


げんなりガイジンサンに手を振って見送る。



腕にはめた時計が二週半も走ってくれたおかげで、腕が重たい。


ため息一つこぼして、時計をにらむ。

このご時世に、遭難したような気分になるね。

お金がないのは分かるけど、早くケータイ復活させてよね。



ぶつくさ文句を言いながら、コートのポッケに手を突っ込む。

くしゃり、と紙の音がして、中身を引っ張りだす。


暇つぶしに開いてみた。


レシートの山は、コンビニにファミレスにマック…

…ろくな食生活じゃないな。


げんなりと一緒に、ゴミ箱に突っ込もうとしたら、ひらりと一枚が落ちた。


よっこらせ、と屈んでつかんだのは、いつだかに引いたおみくじだった。

目についた文字に、思わず乾いた笑いが浮かぶ。



『待ち人 来る、遅し。』

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