「おい!?」
リュートが声を上げたと同時に、黒い手はベリルに巻き付いて木々の影に引きずり込んだ。
影はベリルを眼前まで引き寄せると、紫の目をぎょろつかせて真っ赤に裂けた口に笑みを浮かべた。
けれども、ベリルは表情を変える事なくその瞳を見据える。
「くっ」
あんな奴でも、このまま見捨てるのは後味が悪いとリュートは剣に手をかけたが、ふと向けられたベリルの視線に手を止める。
ベリルはしばらく、ざわざわと絡みつく手と本体の影を見定めるように沈黙し、ゆっくりとハンドガンを抜いて引鉄を絞った。
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