「どうしたものか」
思案していると、三十メートルほど向こうに二つの人影が見えた。しばらく様子を見ていれば向こうもこちらに気が付いたらしく、ゆっくりと近づいてくる。
影はどうやら、若い男女のようだ。男の方はベリルに警戒しているのか、向けられる視線が遠くからでも妙に痛い。
とはいえ、警戒するのも無理はないのかもしれない。
互いの衣服には、かなりの隔たりがある。それは、文化の違いという言葉では表しきれない。
二人はマントを羽織っており、旅でもしているのか全体的に薄汚れている。リュックを背負い足元は革製の靴ではあるものの、よく知る革靴とは異なっていた。
所謂、きちんとした身なりのためのものではなく、丈夫で歩きやすく造られているものだと見て取れる。
男女共、腰に剣を携えておりその格好は言うなれば、中世を思わせる風貌だ。大いに興味をそそられる二人ではあるけれど、現状はそんな場合でもない。
ベリルはふと、女の方に視線を留めた。