ケータイ小説 野いちご

エレファント ロマンス

5.
Ursus maritimus 【ホッキョクグマ】

明奈と一緒に駅の近くのスターバックスで温かいココアを飲んだ。


やっと落ち着きを取り戻すことが出来た。


「由衣。何があったの?」


明奈が心配そうに聞いてくる。


きっと明奈なら、私の言うことを信じてくれる。


二面性をもつ鳴沢先生のことを打ち明ける決心をした。


「あのね……」


重い口を開きかけたとき、ケータイにメールが入った。


ごめん、と明奈に断ってから、ケータイを開いた。


【メガネ、忘れてるよ】


そのタイトルを見て、ゾクリと背筋が凍った。


―――鳴沢先生だ……。


タイトルだけで文章はない。


文章のかわりに画像ファイルが添付されている。


恐る恐る画面を下に送って、jpgファイルを見た。


あっ、と声を上げそうになった。


そこに写っていたのはベッドに横たわる私の写真だった。


着ているワンピースの裾は、下着が見えそうなぐらいめくれあがっている。


起きたときにはきちんととまっていた胸のボタンが全部はずれ、胸の谷間がはっきりと見える。


油断しきった寝顔。


知らない人が見たら、
『同意の上で何かあった後だ』
と誤解するだろう。


反論の余地がない証拠写真。


実際、『何もされてない』という確信はない……。


「由衣。どうしたの? 真っ青だよ?」


明奈が心配そうに顔をのぞきこんでくる。


「ごめん、アッキー……。私、やっぱりまだ気分が悪くて……」


「大丈夫?」


「また今度、ちゃんと話すから……。けど、ひとつだけ信じて。私、鳴沢先生とは付き合ってない」


明奈は
「わかった」
と笑ってくれた。


「その代わり、由衣もひとつだけ信じて」


「なに?」


「私、鳴沢先生より由衣の方が大事だから。それ、今日、はっきりわかったから」


うん、とうなずいたはずみに安堵の涙がぽろっと頬をすべった。


―――きっと何があっても、アッキーだけは信じてくれる……。


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