ケータイ小説 野いちご

エレファント ロマンス

1.
Loxodonta africana 【アフリカゾウ】

掃除のおばさんが、鉄柵に固定されているプレートをキュキュッと拭いた。


この動物園ではどこのゾーンへ行っても、これと同じ白いプラスチック板が、檻の中の動物について教えてくれる。


『アフリカ象』
『分類:哺乳綱 ゾウ目 ゾウ上科 ゾウ科』
『性別:メス 名前:デラ』


大人の腰の高さほどの鉄柵の向こうには、小さなグラウンドのような楕円形の敷地がある。


けれど、象の姿はない。


―――今日は象も欠席か……。


がっかりしながら、柵の前のベンチに座り、カバンからケータイを出した。


「あ。アッキー? 私。由衣だけど。今日も休みたいの。学校連絡、また頼んでもらっていい?」


電話の向こうで明るい声が『いーともーっ』なんて叫んでいる。


私はごめんね、と言ってから電話を切った。


この電話一本で、クラスメイトの彼氏が父親を装って学校に連絡してくれる。




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