『インドクジャク』


『分類:キジ目 キジ科 クジャク属』


土曜日。


杉浦明奈に呼び出されて、動物園の鳥たちがいる巨大なケージの前で待ち合わせた。


「由衣〜」


クジャクのオスよりカラフルなレギンスが、明奈のミニスカートの裾からスラリと伸びている。


「アッキー!」


私も出来るだけ明るく笑って手を振った。


「おまたせ〜」


ふたり並んでケージに沿って続く遊歩道を歩いた。


「由衣。鳴沢先生になんか言われたの?」


いきなり聞かれてドキリとした。


「な、何かって?」


「わかんないけど……。あれから由衣、学校に来ないから」


本当のことを言うべきかどうか迷った。


「それと今日、鳴沢先生に由衣のケータイ番号とアドレス、聞かれたから教えたよ?」


「え? 教えちゃったの?」


びっくりして大きな声を出してしまった。


「え? いけなかったの?」


明奈も驚いたようにまつ毛をパチパチさせている。


完全に先生のことを信用している。


「やっぱり、鳴沢先生に何か言われた? あたしのせいだったら、ゴメンね?」


明奈が申し訳なさそうに言う。


「あのコンドームが原因で由衣が学校に来れなくなってるんなら、本当のこと言ってもいいんだよ?」


必死に訴える明奈の顔を見て、中学時代のことを思い出していた。




あれは中間テストの前の日……。


ひとりの男子生徒が職員室のゴミ箱から、翌日のテスト用紙を拾ってきた。


クラスのみんなは悪ノリして、相談しながら100点満点の解答用紙を作り上げ、全員にコピーを配った。


それを受け取らなかった私以外は全員が満点。


不正が許せなかった私は、事実を先生に告げた。


その日から、クラスメイト全員による私へのネグレクトが始まった。