楓の後ろ姿を見送ると、昼休みのチャイムが鳴った。

部屋にいた人たちは、我先にと、昼食をとるため部屋を出て行った。



「もう昼かぁ~」

あたしはぶつぶつ言いながら、席を立った。


「すみません」

声の方を見ると、出入り口に男の人がいた。


「篠沢さん?」

あたしは返事をした。

篠沢さんはフロアもブランドも別の部の課長。
30歳で仕事は出来るし、芸能人バリにカッコいいからモテる。

うちの部と篠沢さんの部はターゲットの世代が似てるからたまに協力したりしてる。
篠沢さんとこのはフリルなんか付かないし、デザインは真逆だけど。

「あ、みゆきちゃん。恵庭さんに資料借りに来たんだけど」

篠沢さんはあたしを見つけ、話掛けた。

「えーと、さっき出ていきましたけど。」

「え、すれ違い?!困ったな」

「急ぎ…ですか?」

「出来ればね。」

「じゃああたし探してすぐ届けますけど。」

「本当に?!」

「はい、篠沢さんのデスクで良いですよね?」

「ありがとう、助かるよ。去年のデザイン集ね!」

「はい!」


篠沢さんは微笑んで部屋を出て行った。


あたしは昼休みを返上して楓の机を漁り始めた。