―守るべきモノ―


「奈桜!奈桜どこ!?」


奏が血相を変えて楽屋に飛び込んで来た。



8月の暑い日…
今日はZのコンサート初日。
セミの声が緑深い木々の葉の隙間から響いて来る。
空はどこまでも高く、青く、目を潰しそうな太陽光はジリジリと地上を焦がす。
朝早くから集まり始めたZのファンたちは、午前9時の段階ですでにドーム球場をぐるりと1周していた。
駅からの道はまるで磁石に引き付けられる砂鉄のように、女の子たちをドームへと押し流している。


「何!?何が起きたの!?」


「宇宙人の襲来か?」


その勢いに泉が立ち上がり、心は面倒くさそうに振り返る。