頭の中が真っ白になった。分かるはずなのに、チヨークを持つ手が震える。



佳祐が近寄って来た。



そばに来ないでよ。よけいに手は震えるし、問題が頭に入らない。



佳祐はチヨークを持った私の手を持ち、「よく見てここはね。」と優しく語りかける。



私は佳祐の顔を見てしまった。やっぱり昔の優しい佳祐の顔だ。



一瞬二人だけの世界にはいってしまった。



私たちは手を重ねたまま見つめ合った。



私の手が自然と動く、佳祐は解き方を私の耳元で説明し続ける。



チヨークの手が止まった。



この数分がとても長く感じられた。



私はどうやって席に戻ったのか?覚えていない。



光太が心配した顔で私を見る。



大丈夫だよ。と笑うと無理するな。の顔をした。



光太には何でも分かっちゃうんだよね。



数学の授業はほぼ毎日ある。



毎日こんなんじゃ私どうにかなっちゃうよ。