「っ、はぁ、はぁ…」

「加奈子、なんで…」


急いでここまで走ってきたせいか、ゼェゼェと息があがる。

翔の方は、まさかわたしがここに現れるとは思っていなかったのか、終始唖然としていて。


「……」


そんな中、今も肩で大きく息をするわたしに

目の前にいた三浦さんは何も言わず、
ただ一瞬――ニコッと微笑んだかと思うと、ふいにスッ…とわたし達から背を向けた。



「それじゃあ、あたしはもう行くね」

「!」



あ……



“明日、出発前に三浦と直接会ってこのこと全部ちゃんと話す”


“さっきあなたと廊下で出くわす前、通りすがりに見かけたわよー?
幼なじみの広瀬くんと、誰か他の知らない女の子が、何だか深妙そうに話をしているところをね”



「三浦さん、待っ…!」



このとき、とっさにあの春野先生の言葉がよぎって

あわてて後ろを振り返り、
この場から居なくなろうとする三浦さんを引き止めようとしたものの

そんなわたしの腕を――追いかけてきた翔の手がグッとつかんだ。