“向こうはそうだと思ってない”



―結局、直哉くんに本当のことは聞けず…


修学旅行1日目の大半は
飛行機やバスでの移動時間がほとんどで

昼食をとったあと、近くの観光名所をぐるぐると見てまわり

ようやく宿舎の旅館にたどり着いた頃には、外はもうすっかり夕暮れになっていた。


「えー、無事
今夜の宿泊先に到着しました。
貴重品は各室長ごと、この袋の中に入れて
荷物を部屋に置いたら
夕食の時間までに全員入浴は済ませてくること。
ケガ人や急病の出た生徒は
ただちにあたしのいる部屋まで来ること。
それから。念のため忠告しておくけど
修学旅行中はもちろん。この旅館内で、くれぐれも!
高校生らしからぬ怪しい行動はつつしむように!!」


旅館へ入るなり
1学年全員、集合させられた入口のロビーで

耳にかけていたメガネをクッとあげたかと思うと
わたし達に向かってビシィ!と唐突に指さしてきたのは、保健医の春野先生。


そんな先生を前に
クラスの男子がとっさにヤジを入れる。