「え?柳がいない?」


あたしは食事の手を止める…こともなく、報告してきた執事をじっと見た。


「…あんたまさか、柳に上手く丸め込まれたんじゃないでしょうね?」


「ち、違います!屋敷の中をくまなく探しましたが、どこにもお姿が…」


「わかったわ。ありがとう」


物凄く焦っている執事を下がらせ、あたしは最後のパスタを飲み込んだ。


…ったく、どこ行ったのよ。


せっかく街に行こうかと思ったのに…運転手がいないんじゃ行けないじゃない。


下手くそな運転手だけど。



あたしはフォークをお皿の上に置くと、席を立った。


何しようかと考えていると、ポンと頭に考えが浮かぶ。


「…そうだ」


ポツリとそう呟くと、あたしは急いで部屋に向かった。



棚の中から、そっと袋を取り出すと、小さな鞄に詰め込む。


それを肩にかけ、窓を開けると、窓枠に足を乗せた。


今日は、風が心地いい。