真っ白な空間に、ぽつんと立っていた。

しばらく何も考えることなくそこに立っていると、徐々に周りの景色が黄色に染まりだした。
 
ゴウゴウと風の音が耳を劈き、砂混じりの風が体を弄る。砂の上に立つ足は不安定で、しっかりと踏ん張らないと引っくり返りそうだ。
 
──黎は、空を見上げた。
 
黄色い太陽が砂嵐に光を弱められ、悲しげに浮かんでいる。
 
しばらく太陽を眺めた後。
 
まっすぐに前を見据えた。
 
遠くに見える灰色の、低い建物の郡。

「リトゥナ…」
 
見覚えのある景色、建物。それは遥か遠き故郷、リトゥナ──。
 
 
建物の方角から、微かに歌声が聞こえてくる。目を閉じてその声に耳を傾け、そして一歩、足を踏み出した。