高倉乃亜は後悔していた。
 
昼過ぎから降り始めた雨は徐々に強くなり、下校時刻には大雨になっていた。

友達はみんな親に迎えに来てもらっていたのだが、生憎、乃亜の家には誰も居ず、一人で帰ることになった。
 
友達の一人に一緒に車に乗っていくように勧められたが、このくらいの雨なら大丈夫だろうと、赤いタータンチェックの傘を差して歩き出したのだった。
 
しかしそれが間違いのもと。
 
歩き出してしばらくすると、台風並みの風が吹き出した。傘の柄をしっかりと握っていても、風に煽られて今にも飛ばされそうになる。
 
道路はあっという間に川となり、靴の中までぐちょぐちょ。

「あーもうっ、傘なんて意味ないじゃない!」
 
長袖の白いセーラー服はぐっしょりと濡れ、肌にピタリと張り付くのが気持ち悪い。

頭を覆っているはずの傘だが、下からも風が吹き上げてくるので、見事なまでに頭からつま先までまでずぶ濡れだ。

しかし意地になっているのか、それでも乃亜は傘を握って歩いていった。
 
それからおよそ二十分。暴風雨と戦いながらようやく家の前までたどり着く。

「やっと着いたよー」
 
小さな体で雨風と格闘したため、かなり疲労していた。