あの嵐の日からレイが目覚めるまで、三ヶ月が経っていた。
 
その為体力や筋力が衰え、やせ細った足では歩くこともままならない状態になっていた。
 
レイを助けてくれたという医者、聖の指導のもと徐々にリハビリが行われ、食事も口から取れるようになったことから、二週間後には日常生活に支障がないくらいに回復した。
 
そうして体が健康になってきたら、今度は自分のことについて考えるようになった。
 
リハビリをしている間は体を回復させることで精一杯だったが──余裕が出てきたのか、記憶にない以前の自分のことを、知りたいと思うようになった。



「レイ、ちょっといい?」
 
そんな時、兄であるヒオウが改まった顔をしてレイの病室を訪れた。

「うん」
 
レイはベッドの横に置いてある丸椅子をヒオウに差し出す。ヒオウは礼を言ってからそれに座った。そして、一呼吸置いてから話を切り出した。

「あのね、体も大分回復したみたいだし……そろそろ、レイのこと、話そうかと思って。あ、話を聞きたくないなら、そう言ってもらっていいのよ。まだ心の準備が整ってないっていうなら……」

「えっ……ううん、大丈夫!」
 
レイは少し身を乗り出してそう言った。何といいタイミングだろう。自分がそろそろ過去のことを知りたいと思った時に丁度良く話を切り出してくれた。