「そ…っか。大変だったな」


鈴宮はうつむいたまま言う。




「鈴宮。私は同情も慰めもいらない。

だから……

もう私に二度とピアノのことを言わないで」













ピアノを辞めたい、と親に言ったときは理由を聞かれたぐらいで反対はされなかった。



私が苦しんでいたのを知っていたから。




でも・・・ピアノを辞めたときは今よりも拒絶反応が大きくて
音楽の授業を受けるのも苦痛だった。



だから…私は頼んで
今までの大会の記録、ネットの書き込みなどの私に関する全ての記事を消してもらった。




あとは時がたち、人々の記憶から“音梨 奏”の名前を消えるのを待って――