「いつでも遊びにおいで」

そう、優しい言葉をかけてくれたおはるに、幸姫は大きく頷いた。

「うん、またお味噌汁飲みにくる!」

「いやだよ、この子は。食い意地がはってるんだからねぇ」

そう言っておあきがけらけらと笑った。

「でも、殿様が妙に気に入っているとは思ったけど。あんたたいしたもんだよ」

うんうん、と頷くおなつに、幸姫はずん、と暗い顔になった。

「小十郎様のお屋敷で働けることだって十分名誉なことだけれど、殿様のお屋敷に奉公するとなれば、故郷の親御さんも喜んでるんじゃないのかい?」

おふゆに言われて、幸姫の体がぴしっと固まった。

「おふゆさん!…ほら、せっかくの門出なんだ。そう、暗い顔をしなさんな」

「そうそう、そんな顔をしてるのは似合わないよ」

おはる達が慌てた様子で幸姫を励ました。
喜多が何を言ったのか分からないが、この4人の間で、幸姫に両親の話をするのはタブーになっているようで、必死で幸姫を元気付けようとしてくれた。

「また、絶対に遊びにきます!」

苦笑いしながら幸姫が元気よく言うと、おはるが少し涙ぐみながら、幸姫をぎゅっと抱きしめた。

「いつだって遊びにおいで!」

「うん!」