『…ね、道留君…?』

「んー?なぁに?」

『…は、離れて…?』

「ヤダ」



ガビーン。



"道留君の彼女にしてください"と告げてからほんの数分経った今。



未だあたしは道留君に抱き締められたままの状態でソファーに道留君と座っていた。



そして突然"彼氏彼女"の関係になったもんだからそれはもう意識しちゃって、抱き締められているだけであたしの心臓はバクバク。



それとやっぱり恥ずかしさもあって道留君に離れて欲しいとお願いすれば、道留君から返ってくるのは小さい子供みたいに拗ねた口調の"ヤダ"の一点張りで。



しかも離れるどころかさらにあたしをギューッと強く抱き締めてきて、同じセリフをもう五回もあたしと道留君は繰り返していた。



『みみみ道留君〜…』



抱き締められて身体と身体がくっ付いているから薄いシャツ越しに道留君の体温を感じてそれがより一層あたしの恥ずかしさを煽る。



こらえきれずに名前を呼び、恥ずかしさで込み上げてきた涙を溜めた瞳で道留君の胸から顔を上げて道留君を目にしたなら。



道留君はうっと言葉を詰まらせ、頬っぺたをほんのりと。だけど見れば分かるぐらいに赤く染め上げ、肩を押し返してあたしの身体を自分から少し離すと、フイッと顔を背けて口許を手のひらで覆った。