――…って、ちょっと待ったぁ!



『待って道留君!違う違う〜!』



あたしの手を掴んだままずんずんと駅の中、人が行き交っているところを目指して歩く道留君に慌ててストップを掛ける。



黙々と足を動かしていた道留君も後ろで待ってと言えば止まってくれて、「ん?」と振り返って見下ろしてきた顔にキュンッ。



…じゃなくて!



あたしは不思議そうな表情を浮かべる道留君のあたしの手を掴む方の手をグイグイッと引っ張りながら言う。



『ダブルデートだよ道留君!イブと壱翔君も一緒じゃなきゃ!』



そう。あたしが動き出してから気付いたことは、ダブルデートなのに道留君がイブと巳陵壱翔を置いてあたしだけを連れて来たこと。



あたしも流されてイブに"頑張って"とか大きい声で言ってひらひらと手を振っちゃったけど、考えてみれば振らなくてもいいし叫ばなくてもよかったのだ。



一緒に行動するんだから手を振る必要も、頑張ってとか叫ぶ必要もなし。



ね、戻ろ?と、手を引っ張ってイブ達のところに戻ろうとするあたしとは反対に、動こうとはせずむしろ何で?という表情を浮かべる道留君。