俺の憑いている毎熊奈緒は、深い眠りについていた。

 しかし体に染み付いた習慣というのは、深酒をした後にも機能するらしい。

 覚えのある寝心地。

 しかしどこか違う。

 軽い違和感を覚えながら目を覚ますと、そこは自宅ではなかった。

 パリパリでしわのない真っ白なシーツ。

 少し離れたところに、男がむこうを向いて眠っている。

 それが誰であるのか、奈緒はすぐに理解できた。

「あれ? 沢田くん?」

 そう言おうとして、奈緒はとんでもなく喉が乾いていることに気付く。

 ボトルのミネラルウォーターに手を伸ばすと、頭がガンと痛んだ。

「……っつぅ……」

 いわゆる二日酔いである。

 何とか喉を潤し意識がハッキリしてくると、途端に奈緒はパニックに陥った。

(あたし、どうして沢田くんとホテルにいるの?)