「やっぱ一回戻るわ」

あたしは立ち止まって言った。

「なんで?」

振り返る達郎の顔には不満の色が浮いていた。

「だって、勝手なことはできないし」

「捜査なんだからいいじゃないか」

「捜査だから勝手なことはできないのよ」

あたしたちがいるのは、JRの「みどりの窓口」の前。

田村清がやったのと同じように、特急東海1号‐こだま号を使って、東京‐静岡‐掛川を乗り継いでみようと達郎は提案してきた。

確かに何かがわかるかもしれない。

いい案だとは思う。

でもやはり勝手なことはできない。

「お固いなぁ、レミは」

そう言われても、あたしは捜査一課に配属されたばかりの新人なのだ。

「なに言ってるんだよ今さら。民間人のオレを巻き込んでおいて」

「それはそうだけど…」

「もういい、じゃあオレ1人で行くよ」

そう言うと達郎はみどりの窓口へと向かった。

「あ、切符代は捜査一課に請求するから」

「え!?ちょっと達郎!」