掛川から戻って二日後。

あたしは達郎の家へ向かう坂道を登っていた。

前日までの雨が嘘みたいに止み、空は晴れ渡っていた。

その分、3月とは思えないほど暖かく、あたしはコートを着てきたことをえらく後悔するハメになった。

「天気予報のバカ」

愚痴りながらも坂道を登り切ったあたしの前に、周辺の家を圧倒する門構えが現われた。
「相変わらずデカい家だこと」

正月に年始の挨拶で訪れたが、相も変わらぬ威圧感を発している。

門をくぐってまた呆れるぐらい歩き、玄関にたどり着くと、お手伝いの梅谷さんがあたしを出迎えてくれた。

いま現在、家にいるのは達郎と梅谷さんの2人だけだという。

「達郎様はご自分のお部屋に居られます」

案内しようとする梅谷さんを制し、あたしは達郎の部屋へ向かった。

どこぞの老舗旅館かと思うぐらいの長い廊下を歩き、ようやく部屋へとたどり着く。

ノックをすると返事が返ってきたので、あたしは中へ入った。