「日野」

昼休みあけ。

あたし日野麗美は席についたとたん、上司の岸警部に呼ばれた。

念願の捜査一課に配属されて一か月。

『冷蔵庫』と陰で親しまれている(?)警部の巨体にも見慣れた頃だった。

「何でしょうか」

「掛川で殺しだ。今から出るぞ」

「掛川って…静岡県のですか?」

「そうだ」

あたしの頭の中に無数の?マークが浮かぶ。

「なんでまたいきなり」

「事情は道すがら話す。急げ」

岸警部は上着を羽織りながら席を立った。

あたしは頭の中の?マークを増やしながらもバッグを手に取った。

ひと雨ごとに暖かさが増す2006年3月のある日のこと。

それはある人物との
「再会」と「始まり」の日だった。