とある山の中に人が住む里があり、

その里から少し歩いた場所に桜の木だけで構成された森があった。

しかし春だと言うのに桜の花は咲いておらず枯れ木のままである。

その場所を二人の男女が歩いている。

男は深緑色の着物の中に白い洋服を着、紺色の袴を履いている。

黒い短く切られた髪が風になびく。歳は二十歳を超えて少しであろう。

女は薄桃色の布地に鮮やかな桃色の花を散らした着物姿であった。

背中まであろう黒い髪を高い位置で一つに結っている。

歳は男と同じか少し若い印象である。